4×4 MIMOの速度公称値をまとめてみた (64QAM対応編)
Contents
はじめに
ドコモが256QAMと4×4MIMOの導入を発表したため、三大電気通信事業者とそのグループ企業が提供するTD-LTE(互換)サービスの4×4 MIMO実施時の速度公称値および、それを推測する材料が出そろいました。なので “20MHz幅で64QAM運用した1波あたりの速度公称値” をまとめてみたいと思います
あわせて読めよ
MIMOって何?
Multiple Input and Multiple Outputの略で、データ通信の信頼性性を向上させたり通信速度を向上させたりする技術です。名は体を表し、送受信側両方に2つ以上のアンテナを用意し、送りたい情報をいい感じに計算して複数のアンテナに割り振って “同じ周波数で同時に” 送信し、受信側では混ぜこぜになった複数の信号を “いい感じに計算して” ノイズの中から情報を発掘したり、ごちゃごちゃになって送られた大容量のデータを正しく読み解く仕組みのことを言います。LTEでは通信速度の向上にばかり焦点が当てられているわけですが、これには “いい感じに計算する” ということが特に必要である一方で、現実の空間は残念ながらいい感じに計算できる状況ばかりではありません。他にもアンテナの数を増やすと “いい感じに計算する” ための情報、いわゆる制御信号を多く通信しなければならなくなるので、公称速度が向上してもそれほど実効速度が速くなるわけでもないことに注意が必要です。
実際の速度
ソフトバンク(Wireless City Planning)
Wireless City PlanningがBand 41として提供するTD-LTE互換サービスのAXGPでは下り最大175Mbpsとなります。
ソフトバンクの第2ブランド・Y!mobileでは4×4 MIMOおよび連続する2波合計30MHzのキャリア・アグリゲーションに対応したモバイルルータを販売しており、これの商品紹介ページには当然ながら通信速度について書かれています。下り最大速度はエリアによって261, 187.5, 175, 150, 112.5, 110, 75, 37.5Mbpsのいずれかと書いてあり、参考にした504HWはFD-LTEにも対応していること、FD-LTEでは4×4MIMOに対応しないこと、CAでは純粋に倍々ゲームで速度を公称している、以上3点から261Mbpsおよび175Mbpsが4×4 MIMO時の速度と考えられ、261Mbpsは4×4 MIMOだけでなくCAも利用した時の速度と考えられます。利用周波数帯域の比で除すと174Mbpsになるため、261Mbpsおよび175Mbpsという値はそれぞれ小数点第一位で四捨五入した値と考えられます。
地域BWA
総務省が公表している値は220Mbpsとなります。各地域BWA事業者で速度公称値が異なる場合もありますが、2016年09月18日現在簡単に参照できる情報は総務省の情報のみです、
KDDI(UQコミュニケーションズ)
KDDIグループのUQコミュニケーションズはTD-LTE互換サービスのWiMAX2+を提供しており、これの4×4 MIMO利用時の下り最大速度は220Mbpsとなります。
UQコミュニケーションズは連続した2波合計40MHzのキャリア・アグリゲーションと、4×4 MIMOのどちらか1つに対応した端末をそれぞれ販売しており、どちらにも “ヤ倍速” の愛称がつけられて220Mbpsでの通信が可能なことがアピールされています。
NTTドコモ
ドコモが原則として混雑地帯に混雑緩和目的で設置する、Band42 3.5GHz帯基地局。上に挙げた3者と違って正真正銘のTD-LTEサービスです。これは受信時最大181Mbpsとなります。(追記アリ)
2016年09月13日にNTTドコモは1Gbps通信に向けたネットワーク説明会を行い、今後の網の更改予定を公開しました。この中で500Mbps超のサービスとして2種類のサービスを発表しました。1つ目が東名阪地域限定の2GHz帯・1.8GHz帯・800MHz帯を組み合わせた375Mbpsサービスに、256QAMという高度変調方式を導入することによって速度を向上させる500Mbpsサービスです。そして2つ目が1.8GHz帯の1波20MHzと3.5GHz帯の連続する2波40MHzとを組み合わせた370Mbpsサービスの、3.5GHz帯側のMIMOを2×2から4×4に変更することによって512Mbpsとするものです。
追記(2017/08/01):
2017年9月より開始された788Mbpsサービスでは、Transmission Modeを4に変更することにより、4×4MIMO 20MHz幅あたりの最大速度は220Mbpsとなりました。
Transmission Modeの値が9の時、上記の181Mbpsとなります。
まとめ
TDD 20MHz幅で運用した1波 (1CC) あたりの速度公称値はそれぞれ
- ソフトバンク: 175Mbps
- 地域BWA: 220Mbps
- KDDI: 220Mbps
- NTTドコモ: 181Mbps(TM9), 220Mbps(TM4)
参考文献
- “LTE Transmission Modes and Beamforming White Paper“, ROHDE&SCHWARZ
- “Pocket WiFi 504HW スペック“, Y!mobile 2016年09月18日閲覧
- “地域広帯域移動無線アクセス(地域BWA)システム“, 総務省電波利用ホームページ 2016年09月18日閲覧
- “4×4 MIMOとは?“, UQコミュニケーションズ 2016年09月18日閲覧
- “WiMAX 2+新料金プラン「UQ Flat ツ-プラス ギガ放題」登場!“, UQコミュニケーションズ 2016年09月18日閲覧
- “2016年度 ネットワーク説明会“, NTTドコモ 2016年09月18日閲覧 2017/09/11現在リンク切れのためアーカイブ