700, 900MHzのプラチナバンドLTEには上りに制限があるというおはなし
はじめに
当初のプラチナバンド再編予定では700MHzを上り(端末→基地局)・900MHzを下り(基地局→端末)とした日本独自のペアバンドとして用いる予定でしたが、エリクソンやソフトバンクがこれに反対し、結果的に現在では700MHzがBand 28として、900MHzがBand 8として定義された割当で部分的に利用されているのは周知の事実かと思います。しかしKDDIのBand 1上りがPHSに近く制限がかかっているのと同様に、これら2つの上りは他の電波利用者への割り当てが近く制限がかかっている、というのが今回のお話です。
700MHz LTEに課せられた条件
Band 28の割り当ては以下のようになっています。Band 28では端末の低廉化と性能の向上のため、他のバンドと違って2つのデュプレクサを用いて提供することとなっています。
上り周波数[MHz] | 下り周波数[MHz] | 日本での利用 | |
Band 28A Lower Duplexer |
703 – 733 | 758 – 788 | KDDI |
Band 28B Upper Duplexer |
718 – 748 | 773 – 803 | (KDDI) ドコモ ソフトバンク |
さて700MHz帯LTEの近くには何があるのでしょうか? その答えはテレビ放送です。Band 28の定義の中には、KDDIに割り当てられている上り帯域である718 – 728MHzには特別の制限があり、 “日本で用いているデジタルテレビ帯域である470 – 710MHzにノイズをまき散らすな” という規定があります。そしてノイズをまき散らさない方法として具体的に、 “10MHz幅で運用するときは連続送信幅を5.40MHzまでとしなさい” と規定されているのです。このためKDDIのBand28 LTEの上りは最大15Mbpsとなっているのでした。ちなみにBand 1の上り同様に連続送信幅制限を撤廃すべくKDDIは動いていたようですが、CAしなかった場合にUpper Duplexerを利用するようにすれば制限をかける必要性はないことや、Band 18との組み合わせでCAしたときにのみ制限をかける必要性があることを理由として、直近のうちには改定しないこととなりました。
900MHz LTEに課せられた条件
Band 8の割り当ては以下のようになっています。この帯域はGSM900の割り当てを根拠とするもので、GSM 1波あたりの幅がわずか200kHzであったため上りの最高周波数と下りの最低周波数が近づいているためLTE 1波の最大幅が10MHzまでとなっています。
上り周波数[MHz | 下り周波数[MHz] | 日本での利用 | |
Band 8 | 880 – 915 | 925 – 960 | ソフトバンク |
日本では韓国同様に800MHz帯バンドと900MHz帯バンドで携帯電話サービスを提供しています。このため900MHz帯サービスの上り帯域のすぐ近くに800MHz帯サービスの下り帯域が来てしまうこととなります。このためBand 8の定義にはソフトバンクに割り当てられている上り帯域の900 – 915MHzには特別の制限があり、”Band 18, 19の下り帯域である860 – 890MHzにノイズをまき散らすな” という規定があります。そしてこれの対策として “5MHz幅で運用するときで900 – 910MHzを上りとして使う時は連続送信幅を3.60MHzと、10MHz幅として運用するときでは905 – 915MHzを上りとして使う時は連続送信幅を5.76MHzとしなさい” と規定されているのです。このためソフトバンクのプラチナバンドLTEの上り最大速度は多くの場合で16Mbpsとなっているのでした。
参考文献
- “3GPP TS 36.101 version 12.5.0 Rel-12“, 3GPP, pp.101 – 106, 2016/03/12閲覧
- “Way Forward on NS_17 modification“, KDDI Corporation, 2016/03/12閲覧